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東京地方裁判所 昭和33年(ワ)9105号 判決

原告 藤田久雄

被告 刈込義雄 外三名

主文

原告と被告刈込義雄、同大出喜代との間において原告が別紙物件目録記載の土地の所有権を有することを確認する。

被告大出喜代は原告に対し別紙物件目録記載の土地について所有権移転登記手続をせよ。

被告株式会社升喜商店は原告に対し別紙物件目録記載の土地について同目録第一記載の登記の抹消登記手続をせよ。

被告株式会社丸玉商店に対する原告の請求はこれを棄却する。

訴訟費用はこれを四分し、その一を原告の負担とし、その余を被告刈込義雄、同大出喜代、同株式会社升喜商店の負担とする。

事実

第一、当事者の申立

一、原告(請求の趣旨)

主文第一ないし第三項同旨及び「被告株式会社丸玉商店は、原告に対し別紙物件目録記載の土地について同目録第二記載の登記の抹消登記手続をせよ。訴訟費用は被告等の負担とする。」との判決を求めた。

二、被告等

「原告の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。

第二、原告の主張

一、被告刈込義雄(以下単に被告義雄という。)は昭和二一年八月三〇日訴外建石今から別紙物件目録記載の土地(以下本件土地という。)を買受けた。

二、原告は昭和二四年二月四日被告義雄から本件土地を坪数は約一〇〇坪あるものとして同地上の建物と共に金五〇〇、〇〇〇円で買受けたが、その後実測の結果坪数は九〇坪四勺しかなく、しかも同地の南側約七坪は訴外須長清三郎(現在はその相続人須長高治)によつて占有されていることがわかつたので、原告は被告義雄に代金の減額を求めたところ、売買代金は金四七五、〇〇〇円に減額された。そして原告は同年九月三〇日までに右代金を被告義雄に完済した。

三、その後、原告は代理人を以て被告義雄に対して度々所有権移転登記手続を為すように催促したが、義雄は言を左右にしてこれに応じないばかりか、昭和三〇年一一月二八日には当時本件土地の所有権の登記名義が未だ建石今になつていたのを利用してあたかも被告大出喜代(当時は被告義雄の妻であり、昭和三一年三月一〇日に離婚した。以下単に被告喜代という。)が昭和二一年八月三〇日に建石今から買受けたかのように装つて、建石から被告喜代に所有権移転登記を為してしまつた。

四、被告喜代は本件土地について所有権を有することを主張して原告の所有権を争つているが、被告喜代は本件土地の所有権を取得したことがないのであるから、喜代の右所有権移転登記は実質関係に符合しない無効のものである。

五、被告株式会社升喜商店(以下単に被告升喜という。)は昭和三〇年一一月二八日本件土地について別紙物件目録第一記載の登記(以下第一登記という。)を為した。

六、しかし、右第一登記は実質関係に符合せず無効である。即ち、

(イ)  被告喜代は被告升喜との間に第一登記の登記原因である、根抵当権設定契約を締結したことはない。

(ロ)  また、本件土地は被告喜代の所有ではないから第一登記の登記原因である根抵当権設定契約は目的物を欠き無効である。

七、また、被告株式会社丸玉商店(以下単に被告丸玉という。)は昭和三〇年一二月九日本件土地について別紙物件目録第二記載の登記(以下第二登記という。)を為した。

八、しかし、右第二登記は実質関係に符合せず無効である。即ち、

(イ)  被告喜代は被告丸玉との間に第二登記の登記原因である根抵当権設定契約を締結したことはない。

(ロ)  また、本件土地は被告喜代の所有ではないから第二登記の登記原因である根抵当権設定契約は目的物を欠き無効である。

九、よつて、原告は各被告に対し請求の趣旨記載の如き請求に及んだ次第である。

第三、被告喜代の主張

原告の主張に対し次のとおり答弁した。

(一)  第一項の事実は否認する。本件土地は被告喜代が訴外建石今から買受けたものである。

(二)  第二項の事実のうち、原告が被告義雄から本件土地を買受けたことは知らない。

(三)  第三項の事実のうち、建石から被告喜代に本件土地の所有権移転登記が為されたこと、被告喜代が原告主張の日時に被告義雄と離婚したことは認める。原告が代理人を以て被告義雄に対して度々所有権移転登記手続を為すように促したが義雄がこれに応じなかつたとの点は知らない。その余の事実は否認する。

(四)  第四項の事実のうち、被告喜代が本件土地の所有権を有することを主張して原告の所有権を争つていることは認めるが、その余の事実は否認する。

第四、被告升喜の主張

一、原告の主張事実に対する認否

(一)  第一項の事実は否認する。

(二)  第二項の事実のうち、原告が原告主張の日時に被告義雄から本件土地を買受けたことは否認する。

(三)  第三項の事実のうち、原告主張の日時に訴外建石今から被告喜代に本件土地の所有権移転登記が為されたことは認めるが、その余の事実は知らない。

(四)  第五項の事実は認めるが、第六項の事実は否認する。

二、抗弁

(一)  仮りに、被告義雄が建石から本件土地を買受けたものとするならば、被告喜代は昭和三〇年一一月二八日被告義雄から本件土地の所有権を譲受けて、中間省略により前記の所有権移転登記を為したものである。

(二)  そして、被告升喜は昭和三〇年一一月頃訴外株式会社刈込義雄商店から被告喜代の所有にかかる本件土地を含む東京都港区芝西久保八幡町二六番地宅地二一六坪三合八勺、同町二七番地宅地一一四坪五合五勺を担保に提供するから取引の枠を増してもらいたいとの申出があつたので、同月二八日被告喜代と右二筆の土地について債権極度額を金四、〇〇〇、〇〇〇円とする根抵当権設定契約を締結し、同日その旨の本件第一登記を為したものである。

第五、被告丸玉の主張

一、原告の主張事実に対する認否

(一)  第一項の事実は否認する。

(二)  第二項の事実のうち、原告が原告主張の日時に被告義雄から本件土地を買受けたこと及び原告がその売買代金の支払を完了したことは否認する。

(三)  第三項の事実のうち、訴外建石今から被告喜代に原告主張の日時に所有権移転登記がなされたこと及び被告喜代が被告義雄の妻であつたことは認めるが、その余の事実は知らない。

(四)  第七項の事実は認めるが、第八項の事実は否認する。

二、抗弁

(一)(イ)  本件土地は被告義雄が被告喜代のために喜代が訴外共栄木材株式会社に提供していた資金の回収金を以て建石から買入れたものであるから被告喜代の所有に属する。

(ロ)  仮りに、本件土地は被告義雄が右訴外会社の資金を以て買入れたものとしても、同訴外会社は実質上被告義雄と被告喜代との共同事業であつたから、本件土地は両被告の共有に属する。

(ハ)  そして、被告丸玉は訴外株式会社刈込義雄商店と酒類その他飲料水等の取引をしてきたところ、昭和三〇年一二月九日頃売掛代金債権が二、三〇〇、〇〇〇円に達したので将来の債権を担保するため担保提供方を要求したところ、同訴外会社は被告喜代の所有にかかる本件土地を含む東京都港区芝西久保八幡町二六番地宅地二一六坪三合八勺の担保提供方を申出たので、右同日被告丸玉は被告喜代と右の土地について債権極度額を金二、五〇〇、〇〇〇円とする根抵当権設定契約を締結し、同日その旨の本件第二登記を為した。

(二)(イ)  仮りに原告主張のように本件土地は被告義雄が建石から買入れたものであるとするならば、前記の根抵当権設定契約は被告義雄が当時本件土地の登記名義人であつた被告喜代の名において被告丸玉と締結したものであるから、結局右契約は有効であり、従つてこれに基いて為された本件第二登記も有効である。

(ロ)  なお、原告が昭和二四年二月四日被告義雄と本件土地の売買契約を締結したものとしても、被告丸玉が被告義雄と右根抵当権設定契約をした昭和三〇年一二月九日当時においては、原告は未だ右売買代金の支払を完了していないから本件土地の所有権は原告に属していなかつた。

(ハ)  仮りに、原告が昭和二四年二月四日右売買契約と同時に本件土地の所有権を取得していたとしても、右根抵当権設定契約当時原告はその旨の所有権移転登記を為していなかつたから、被告丸玉に対しこれを対抗することができない。

第六、証拠〈省略〉

理由

第一、被告義雄に対する請求

被告義雄は原告主張事実を明かに争わないからこれを自白したものとみなすべく、これによると同被告に対する原告の本訴請求は理由がある。

第二、被告喜代に対する請求

一、本件土地について建石今から被告喜代に所有権移転登記が為されていることは当事者間に争いがない。

二、成立に争いのない甲第一六号証の六、第一七号証並びに証人小野幸三郎の証言及び被告義雄本人尋問の結果によれば、被告義雄が昭和二一、二年頃訴外建石今から本件土地を買受けたことを認めることができ、成立に争いのない甲第三号証のうち右認定に反する部分は信用することができず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

三、また、成立に争いのない甲第一六号証の三、五、証人蝶谷八郎の証言と原告及び被告義雄各本人尋問の結果とによつて真正に成立したものと認める甲第一号証並びに証人蝶谷八郎、同刈込俊子の各証言、原告及び被告義雄各本人尋問の結果によれば、原告が昭和二四年二月四日頃被告義雄から本件土地を買受けたことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

そして、建石から被告喜代に本件土地の所有権移転登記がなされた事情は後記(第三被告升喜に対する請求二参照。)認定のとおりである。

四、されば、本件土地は原告の所有であると認められるから、被告喜代がこれを争つている以上原告がその確認を求めるについて正当の利益を有すること当然であり、また真実の所有者ではなく単なる登記名義人に過ぎない被告喜代は原告に対して本件土地の所有権移転登記を為すべき義務があるというべきであるから、被告喜代に対する原告の本訴請求はいずれも理由がある。

第三、被告升喜に対する請求

一、被告義雄が昭和二一、二年頃訴外建石今から本件土地を買受けたこと、これを更に原告が昭和二四年二月四日頃被告義雄から買受けたことは前示認定のとおりである。

二、昭和三〇年一一月二八日建石から被告喜代に本件土地の所有権移転登記が為されたことは当事者間に争いがない。

そして、被告升喜は右所有権移転登記は被告喜代が右日時に被告義雄から本件土地の所有権を譲受け、これに基いて為した中間省略の登記であると主張するので、この点について判断する。証人雨宮光義、同野口堅次の各証言及び被告義雄本人の供述のうちには被告義雄が当時本件土地を被告喜代に贈与する意思を有していたことを窺わせる供述部分がないではないが、これらは次に認定される事実に照らすと遽に信用することができない。即ち、成立に争いのない甲第一六号証の三、五、甲第一七号証及び証人小野幸三郎同寺島房重の各証言被告義雄本人尋問の結果を綜合すると、被告義雄は昭和三〇年一一月頃当時同人が代表取締役として経営していた訴外株式会社刈込義雄商店の被告升喜、同丸玉に対する債務が嵩み担保提供方を強く要求されていたので、本件土地を含む東京都港区芝西久保八幡町二六番地宅地二一六坪三合八勺と同町二七番地宅地一一四坪五合五勺との二筆の土地を担保に入れようと考え、同月二八日当時被告義雄の妻であつた被告喜代の印鑑を冒用して委任状を偽造し、右二筆の土地は被告喜代が昭和二一年八月三〇日建石から買受けたものであるかのように装い、前記の所有権移転登記を了したものであること、そして被告喜代は自己名義に所有権移転登記が為されたことを全然知らなかつたことを認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。そして、他に被告升喜の右主張事実を認めるに足りる証拠はない。

三、被告升喜が昭和三〇年一一月二八日本件土地について第一登記を為したことは当事者間に争いがない。

そして、被告升喜は、右第一登記は右同日被告升喜と被告喜代との間に締結された根抵当権設定契約に基いて為されたものであると主張するので、この点について判断する。成立に争いのない甲第一六号証の三、五、甲第一七号証、被告喜代関係部分の成立について争いのある丙第一号証の二の存在成立に争いのある丙第七号証の六の存在並びに被告義雄本人尋問の結果を綜合すると、被告義雄は昭和三〇年一一月二八日被告喜代の印鑑を冒用して被告升喜との間に訴外株式会社刈込義雄商店の被告升喜に対する買掛代金債務の支払を担保するため本件土地を含む東京都港区芝西久保八幡町二六番地宅地二一六坪三合八勺と同町二七番地宅地一一四坪五合五勺との二筆の土地について債権極度額を金四、〇〇〇、〇〇〇円とする根抵当権設定契約を締結し(丙第一号証の二)、更に被告喜代の委任状(丙第七号証の六)をも偽造して、本件第一登記を為したことを認めることができ、右事実に照らすと被告升喜の前記主張に副う成立に争いのない甲第三号証の一部、丙第七号証の五、証人雨宮光義、同長野貞夫の各証言の一部、被告升喜代表者本人尋問の結果の一部はいずれも信用することができない。そして、他に被告升喜主張のように被告升喜と被告喜代との間に根抵当権設定契約があつたことを認めるに足りる証拠はない。従つて、被告升喜の右抗弁は採用することができない。

四、そして、本件第一登記が有効なものであることについて被告升喜は他に何ら主張立証をしないので、これを無効と認めるの他なく、従つて原告の被告升喜に対する本訴請求は理由があるに帰する。

第四、被告丸玉に対する請求

一、被告義雄が昭和二一、二年頃訴外建石今から本件土地を買受けたこと、これを更に原告が昭和二四年二月四日被告義雄から買受けたことは前示認定のとおりである。

被告丸玉は、本件土地は被告義雄が、(イ)被告喜代のために喜代が訴外共栄木材株式会社に提供していた資金の回収金で建石から買受けたものであるから被告喜代の所有であるとか(ロ)同訴外会社の資金で買受けたものであるから被告義雄と被告喜代の共有であるとか主張するので、この点について判断する。証人大出政氏の証言及び被告義雄本人尋問の結果によると、本件土地買受けの資金は被告義雄が代表取締役をしていた右訴外会社から支出されたこと、そして被告喜代も同訴外会社の重役として名前を連ねていたことを認めることができるが、右事実のみでは未だ被告丸玉の前記主張事実を推認するに足りなく、他に右主張事実を認めるに足りる証拠はない。

更に被告丸玉は昭和三〇年一二月九日当時原告は未だ本件土地の売買代金の支払を完了していなかつたから本件土地の所有権を取得していなかつたと主張するので、この点について判断する。およそ物権の設定及び移転は当事者の意思表示のみによつて効力を生ずるのであるから、不動産所有権の移転も売買、贈与等の債権契約の締結と同時に当然に生ずるのを原則とする。たゞ当事者は特約によつてその移転の時期を売買代金の支払完了の時或いは移転登記の時等と定めることができることは勿論であるが、本件において被告丸玉はかかる特約の存在することを主張、立証しないのであるから、被告丸玉の右主張は採用できない。

二、建石今から被告喜代に昭和三〇年一一月二八日本件土地の所有権移転登記が為されたこと、被告丸玉が同年一二月九日本件第二登記を為したことは当事者間に争いがない。

三、被告丸玉は、右第二登記は被告喜代と締結した根抵当権設定契約に基いて為したものであると主張するので、この点について判断するに、次項認定の事実に照らすと丁第一号証の被告喜代関係部分及び丁第六号証の一は被告義雄が被告喜代の印鑑を冒用して作成したものであるから証拠とすることができず成立に争いのない甲第三号証、丁第二ないし第五号証、丁第七号証、証人野口堅次の証言、被告丸玉代表者本人尋問の結果のうち被告丸玉の右主張に副う部分は信用することができず、他に右主張事実を認めるに足りる証拠はない。

四、更に、被告丸玉は、仮定的に本件第二登記は被告義雄が本件土地の形式上の登記名義人となつていた被告喜代の名前で被告丸玉と締結した根抵当権設定契約に基いて為したものであり、而も右第二登記を為す当時原告は未だ所有権移転登記をしていなかつたから、右第二登記は原告にも対抗しうる有効なものであると主張するので、この点について判断する。まず、成立に争のない甲第三号証、甲第一六号証の三、五、甲第一七号証、丁第二ないし第五号証、丁第七号証、被告喜代関係部分の成立については争いがあるが、その余の部分については証人野口堅次の証言並びに被告義雄及び被告丸玉代表者各本人尋問の結果により真正に成立したものと認める丁第一号証、成立に争いのある丁第六号証の一の存在、証人野口堅次、同寺島房重の各証言、被告義雄及び被告丸玉代表者各本人尋問の結果を綜合すると、被告義雄は同人が代表取締役として経営していた訴外会社刈込義雄商店の被告丸玉に対する債務が昭和三〇年一二月頃には約二、〇〇〇、〇〇〇円に達し被告丸玉から強く担保提供方を要求されていたので、同月九日本件土地を含む東京都港区芝西久保八幡町二六番地宅地二一六坪三合八勺の土地についてその登記名義人であつた被告喜代の名前で(右の土地の登記名義人が形式上喜代とされた事情は前示認定のとおりである。第三被告升喜に対する請求二参照。)被告丸玉と債権極度額を金二、五〇〇、〇〇〇円とする根抵当権設定契約を締結し(丁第一号証)、これに基いて本件第二登記を為したことを認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。また、右第二登記が為された当時原告が本件土地について所有権移転登記をしていなかつたことは、原告において明らかに争わないのでこれを自白したものとみなす。

そこで、叙上認定の事実関係の下において本件第二登記が有効なものであるか否かを判断する。思うに、登記は現在における真実の権利状態に合致すれば足り必ずしも物権変動の過程を如実に反映することを要しないものと解すべきである。

されば、根抵当権設定登記にしてそれが有効な根抵当権設定契約に基いて為された以上、偶々所有権者でない者が所有権者として登記されていたため、あたかも所有権者でない者から根抵当権の設定を受けたかのような外観を呈する場合があるとしても、これがため右根抵当権設定登記を無効と為すべきではなく、物権の現状に符合する登記として有効と解すべきである。本件につきこれを見るに、被告喜代に対する所有権移転登記は前示認定の如くこれに対応する物権変動もなく、また現に被告喜代は所有権を有したこともないのであるから実質関係に符合しない無効のものといわねばならないが真実の所有権者であつた被告義雄と被告丸玉との間において根抵当権設定契約が締結されこれに基いて本件第二登記が為されたこと、而も右の当時原告は未だ所有権移転登記をしていなかつたこと前示のとおりであるから、結局本件第二登記は有効に対抗力を有するといわねばならない。

よつて、被告丸玉の右抗弁は理由があるから、被告丸玉に対し第二登記の抹消を求める原告の本訴請求は失当である。

第五、結論

以上説示してきたとおり、原告の本訴請求は、被告義雄、同喜代、同升喜に対する関係では理由があるからこれを認容することとし、被告丸玉に対する関係では理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 福島逸雄)

物件目録

(物件の表示)

東京都港区芝西久保八幡町二六番地の一

一、宅地 九〇坪四勺

(登記事項)

第一

東京法務局芝出張所昭和三〇年一一月二八日受付第一三、一七五号を以てなされた同日付根抵当権設定契約に基く根抵当権者株式会社升喜商店、債権極度額金四、〇〇〇、〇〇〇円、契約期間昭和三三年一一月二七日、特約債務不履行の場合には一〇〇円に付一日金五銭の割合による損害金を支払うこと、債務者株式会社刈込商店の順位一番の根抵当権設定登記

第二

東京法務局芝出張所昭和三〇年一二月九日受付第一三、八五四号を以てなされた同日付根抵当権設定契約に基く根抵当権者株式会社丸玉商店、債権極度額金二、五〇〇、〇〇〇円、利息無利息、債務者株式会社刈込義雄商店の順位二番の根抵当権設定登記

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